2026年10月30日時点の情報です。内容の正確さに努めていますが、変更や誤りがある場合があります。正しい最新の情報は、必ず公式サイトで確認してください。
国語シリーズ
家で話していても、学ぶための日本語は自然には育ちません。海外では、日本語は「受け継ぐ努力が要る言葉」です。
継承語は、親から子へ受け継ぐ言葉のことです。両親が日本語を話す家庭の子どもが海外で育つと、日本語は家庭の言葉、英語や現地の言葉は学校と社会の言葉になります。
継承語の研究では、こうした言葉は、まわりの言葉(現地語)に押されて伸び悩みやすいことが知られています。家では毎日日本語を使っていても、学校の勉強はすべて英語。日本語で読み、書き、考える機会がないまま、学年が上がっていきます。
「母語」と「継承語」
IB の公式文書も、「母語」という言葉は研究によって意味が違う(最初に学んだ言葉、いちばんよく知っている言葉、いちばんよく使う言葉など)と注意しています(PDF 28ページ)。海外で育つ子どもにとって、日本語は「最初に学んだ言葉」でも、「いちばんよく使う言葉」ではなくなっていくことがあります。
継承語の研究者、中島和子さんは、日本語を含めて複数の言葉の読み書きを育てる組み合わせとして、次の形を挙げています(2017年)。
| 組み合わせ | 海外の日本の子どもの場合 |
|---|---|
| 家庭 + 現地校 | 家で日本語、学校で英語や現地の言葉。日本語の読み書きは家庭まかせになりやすい |
| 家庭 + 母語教室・補習授業校 + 現地校 | 土曜日や放課後に、補習授業校などで日本語や国語・算数を学ぶ。国内の教科書を使う |
| 家庭 + 民族学校・外国人学校 | 海外の日本人学校は、これに近い形(授業はすべて日本語) |
海外の義務教育の年齢の日本人の子どものうち、日本人学校に通う子は一部です。多くは現地校やインターナショナルスクールで学び、その一部が補習授業校にも通っています。くわしい数は「海外で学ぶ子どもと日本語」のページにまとめています。
英語で学ぶ国際教育の中心にいる IB は、母語をはっきり「保ち、伸ばすもの」として扱っています(公式文書『IB プログラムにおける「言語」と「学習」』の日本語版より)。
つまり、インターナショナルスクールに通っていても、日本語を学び続けることは IB の考え方に沿っています。DP で日本語を「言語 A」として選ぶ生徒にとっては、それまでに日本語で読み、書き、論じる力をどこまで育ててきたかが、そのまま問われます。
立場を反対にした例が、日本の国内にあります。日本語指導が必要な児童生徒は、9年間で約2倍の約8.5万人に増えました(文部科学省の有識者会議・2026年)。子どもの母語も多様になっています。
この報告書は、日本語指導の補助者とあわせて、「母語支援員」の配置を進めることを挙げています。日本の学校でも、子どもの母語を大切にしながら日本語での学びを支える、という考え方が取られています。海外で日本語を保とうとする日本の家庭と、向きは逆でも同じ課題です。
| 論点 | 考え方の違い |
|---|---|
| 現地の言葉に集中すべきか | 早く現地の学校に慣れるには、家でも現地の言葉を増やしたほうがよい、という考えがある。一方、研究や IB の文書は、母語を止めずに第二言語を足していく形をよしとしている |
| 何のために日本語を保つのか | 日本に帰る予定がないなら要らない、という声もある。南数塾は、帰国や帰国生入試のためではなく、考える力の土台として日本語を育てる立場をとっている |
| 誰が育てるのか | 家庭だけでは、学ぶための日本語(読み・書き・論じる)まで育てるのは難しい。補習授業校、オンラインの教室、学校の母語の授業など、家庭の外の場を組み合わせることになる |
海外で育つ子どもにとって、日本語は放っておくと「家族と話す言葉」のままになります。学ぶための言葉にするには、文章を読み、要約し、根拠を示して書く練習を、意識して続ける必要があります。
南数塾の国語科は、毎日15分、短い論説文・説明文を読んで要約する宿題を出し、講師が一つずつ手で添削しています。継承語としての日本語を、考えるための言葉として育てるためです。
研究の背景は 第一言語と第二言語:研究は何を示しているか、授業と宿題は 国語科のページ にまとめています。
2026年10月30日時点で確認した情報です。最新の内容は、それぞれの公式の資料でご確認ください。