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国語シリーズ
日本語は、何度も「難しすぎる」と言われてきました。それでも残り、いまは考える力の土台として見直されています。
国語をめぐる議論は、大きく二つの問いの間を行き来してきました。一つは「文字や言葉を易しくして、誰もが読み書きできるようにするには」という問い。もう一つは「言葉で、どこまで深く考えられるか」という問いです。
明治と戦後は前者、2000年代からは後者の議論が中心になります。出来事は国の資料や論文で確かめられるものだけを書き、出典は下にまとめています。
1866年(慶応2年)
前島密が「漢字御廃止之議」を出す
将軍徳川慶喜あての建議。国民に学問を広めるには、難しい漢字の使用をやめるべきだという内容で、言文一致(話し言葉と書き言葉をそろえること)を提言した文献とされています。
1900年(明治33年)
文部省が国語調査委員を任命
文字の改革を唱えた前島密や、国語辞書『言海』の大槻文彦らが委員になりました。
1919年(大正8年)
文部省の国語調査室が「漢字整理案」
約2,600字。
1923年(大正12年)
臨時国語調査会が「常用漢字表」
1,962字。国による初めての本格的な漢字の制限の案でしたが、関東大震災で実施されませんでした。
1942年(昭和17年)
国語審議会が「標準漢字表」
2,528字(文部省の修正版は 2,669字)。
1946年3月
第1次米国教育使節団の報告書
国語の改革として、漢字の使用の制限とローマ字の導入を提言しました。
1946年11月
「当用漢字表」と「現代かなづかい」を内閣告示
当用漢字は 1,850字。表に載った字だけを使う、という制限の考え方でした。
1948年
全国の読み書き能力調査
15〜64歳の 16,820人に行った、無作為抽出による全国調査。1951年の報告書は、読み書きのできない人を 1.7% または 2.1% とし「極めて低い」と結論づけました。ただし2022年の論文は、問題の作り方から、この数字を批判なしに引くのは避けるべきだとしています。
1966年
国語施策の見直しが始まる
文部大臣が国語審議会に、国語施策の改善を諮問しました。戦後の施策は、表記を平明にし教育の負担を軽くする目的をおおむね果たした一方、表現をしばるという批判も強まっていました。
1981年
「常用漢字表」を内閣告示
1,945字。漢字表は「制限」ではなく「目安」とされ、専門分野や個人の表記にまでは及ばないと明記されました。
1986年
「現代仮名遣い」を実施
2010年
「常用漢字表」を改定
196字を加え、5字を削って 2,136字になりました。
「GHQ が漢字を廃止しようとした」について
よく聞く話ですが、研究者の間では異論があります。使節団の報告書が漢字の制限とローマ字の導入を提言したことは事実で、ここではそこまでを書いています。
2004年
文化審議会が「これからの時代に求められる国語力について」を答申
国語を論理的思考力の基盤と位置づけ、自然科学でも外国語の習得でも国語の力が土台になるとしました。
2016年
中教審の特別チームが、言語能力を「学習の基盤」として取りまとめ
2017〜2018年
学習指導要領を改訂
言語能力を、すべての学習の基盤となる資質・能力と位置づけました。高等学校の国語には「論理国語」などの科目ができました。
2022年
在外教育施設における教育の振興に関する法律
海外の日本人学校や補習授業校の教育を、国が振興する法律ができました(2023年に国の基本方針)。
2023年12月
PISA 2022 の結果
日本の15歳の読解力は OECD 加盟国で2位。
2025年9月
次の学習指導要領に向けた論点整理
読解力は、時代を超えて常に学習の基盤とされました。
2026年7月
中教審の国語ワーキンググループが取りまとめ案
言葉で考えを整理し深めること、目的に応じて読み情報を確かめることなどを課題に挙げ、生成 AI の時代に「人間ならではの力」を育てる方向を示しました。
2030〜2031年度(予定)
次の学習指導要領の全面実施
小学校は令和12年度、中学校は令和13年度からの予定です。
明治から戦後にかけては、日本語の文字が「覚えるのに時間がかかりすぎる」ことが問題にされ、漢字をやめる案やローマ字の案まで出ました。結果として日本語は漢字とかなを残したまま、使う漢字を「目安」として示す形に落ち着きます。
2000年代に入ると、問いの中心が変わります。読み書きができるかどうかではなく、言葉でどこまで深く考え、根拠を示して表せるか。国の答申と学習指導要領は、国語を「すべての学習の基盤」と位置づけるようになりました。
国が国語をどう考えているかは 国は、国語をどう考えてきたか で、文書のページつきで読めます。
2026年10月30日時点で確認した情報です。最新の内容は、それぞれの公式の資料でご確認ください。